板東教授の
 映像生体影響講座

◇ストレス状態と脳活動 その1
●私たちは環境の中に住んでおり、この環境に適応して、できるだけ有利で快適な生活を送ろうとしています。 環境は時々刻々変化していますから、常に適応するための努力が必要です。 私たちの身体には、学習により、効率よく環境に適応する仕組みが備わっています。

●環境への学習は、すでに私たちが育つ過程で経験しています。複雑な私たちの行動を全部、予め遺伝子で規定することはできません。そのために、私たちは、遺伝子により高い学習能力を発揮できる体制を作り上げ、これを使って生まれ落ちた環境に効率よく適応するようになっています。私たちの能力の半分は環境との相互作用の中で、いわば、現場合わせで決まります。体制の複雑な生物にとっては、この方が生存に有利だと思われます。
 生まれると、私たちは、まず外界に味覚や触覚で触れます。赤ちゃんはまず、何でも舐めてみますし、触ってみます。手を伸ばして触れる範囲が「第一の世界」ということになります。
 次に、「第一の世界」で得た情報を拡張して、視覚や聴覚などを使って、離れたところにある物を知覚することができるようになり、広い「第二の世界」を知ることができます。
 サルを使った実験で学習により、このような適応を再現できることが示されています。理研の入来さんがやった実験ですが、サルの触覚をつかさどる大脳細胞の記録をとりながら、訓練します。この細胞は触覚の細胞ですから、最初は、触れる範囲からピーナッツをとる作業のときには活動しますが、ピーナツがもっと離れたところにあると活動しません。次に熊手のようなもので、手の届かないところにあるピーナッツを引き寄せて食べる訓練をします。それが上手にできるようになった後で、大脳の触覚に関わる細胞の活動を調べると、手の届かないところにあるピーナッツを熊手を使って引き寄せる作業のときにも活動するようになりました。

評価